襲名口上
子供の頃から落語好きだった私が、あるご縁で露の五郎師匠とお近づきになれまして、師匠が二世五郎兵衛の名跡を継がれる時に、襲名に関する印刷物の一切をご依頼くださいました。
襲名の作法も知識もありませんでしたので、師匠に見本となる口上をいくつか見せていただきながら、いろいろ教えていただきました。
お作りする上での師匠からの指示は、「表面に初代五郎兵衛の絵図を入れて」だけでしたから、どう料理して、どう盛り付けるかを、脳みそが沸くほど悩みました。
何より、上方落語の祖と言われる大名跡ですし、名人と言われた師匠と、ご一門に恥をかかせるわけにはいけませんから、その重圧は凄かったです。
最終的に、カンプを3点お見せしまして、このデザインに決まりました。
襲名興行の後に、この口上が国立文楽劇場の展示室に飾ってあると聞いて、見に行ってきましたが、ショーケースに飾られているのを見て、内心、鼻高々でした。(全ては師匠のネームバリューのおかげですが…)
元々、学生時代に文楽のポスターを見て、商業デザインを志しましたので、このお仕事で夢が叶いましたが、この後、しばらくは燃え尽きました。