小学校閉校記念誌
小学校の時の担任の先生から、先生が通っていた小学校が閉校することになり、その、記念誌を発行することになったので、いろいろと教えて欲しいと相談を受けました。
昭和の高度経済成長期を頂点に、印刷業界は右肩下がりが止まらず、最近は、ハイエナのような業者が少なくありません。
不景気で、ウチも儲かってませんが、そんなハイエナみたいな連中と同じように見られるのは嫌なんで、「よそのテリトリーを荒らしたくないから、アドバイスはするけども、注文は地元の印刷屋さんにしてほしい」と先生に伝えました。
原稿の作り方など、いろいろ相談にのっていましたら、地元で積極的に引き受けてくれそうなところが無いからと、学校から見積りを依頼されまして、その後、ご注文いただくことになりました。
明治時代から、百年以上続いた学校の、句点となる本ですから、その重圧はハンパありません。
その上、その学校のことも、土地のことも、全く存じませんでしたから、打ち合わせを兼ねて何度もお邪魔して、その都度、周囲を見てまわったり、教頭先生から、いろいろとお話しを伺いました。
丁寧で、しっかりした原稿を支給していただいたので、主な作業はレイアウトのデザインと、写真のレタッチでしたが、やはり、歴史の重圧を感じながらの作業となりました。
この仕事で一番楽しかったのは、卒業写真のレタッチでした。
現存する卒業写真を全て載せるのですが、明治~昭和初期の写真には、汚れや色褪せ、変色したものが多く、最初は「どうしたものか…」と悩みました。
しかし、補正してみると、近年の写真より古い写真の方が、驚くほど綺麗で鮮明になりました。
カメラは素人なので、よくは存じませんが、昭和後期以降の写真は、フィルムが原因のようで、デジカメの写真は、画素数に原因があるように思いました。
句点に相応しい本にしようと頑張りましたので、とても作り甲斐を感じた仕事でした。
納品後に、「卒業生のお爺さんが、綺麗になった卒業写真を見て、嬉し泣きをされていた」とお聞きし、ものすごく充実感に満たされました。
ものづくりは、良品を作るのが当たり前ですから、不良品のこと以外で、納品後にお客様から連絡をいただくことは、まず、ありません。
ですから、納品直後にお客様から電話が掛かると、居留守をしようかと思うぐらいビビります。
この商売では、納品後に改めてお褒めの言葉をいただくことなど、滅多にございませんから、お喜びの声を聞かせていただきますと、天にも上る嬉しさです。