チケット
(千社札)
これは、露の五郎兵衛師匠の襲名興行の、チケットの半券です。
師匠のお身内から、「お客さんの記念になるようなものが、何か欲しいねぇ」というお声がありましたので、正寸の千社札をご提案しました。
もぎった残りが千社札になります。
師匠に、どんな構図がお望みかをお聞きしましたら、「顔見世の、まねきがよろしいなぁ〜、後ろに竹矢来を入れて」と、おっしゃいました。
顔見世のまねきは見たことがありますが、はて、正しい形がわかりません。
今よりも、インターネットの情報が少ない頃でしたから、あっちゃこっちゃで資料を漁りました。
まねきで一番悩んだのは、上にある屋根みたいなんは、左右のどっちが前なのか…。
他にも、竹矢来の形や組み方も、どっちが前なのか…。
メッチャ悩んで調べました。
幸い、池田文庫が近所やったんで、助かりました。
カンプを3案作って師匠に見ていただいたところ、普段は寡黙で静かな師匠が、この写真のカンプをご覧になった瞬間に、「こら、よろしぃなぁ〜♪」と、高座の時に出される、張った声で褒めてくださいました。
襲名興行の印刷物のデザインで、一番苦労したんがこの千社札でしたが、あのお声で全て報われました。今も良い思い出です。