本の複製

「昔、自費出版で作った本を、綺麗に複製できますか?」と、問い合わせのお電話をいただきました。

「申し訳ございませんが、ものを見てみないと、何とも言えません。」とお答えしましたら、その本を持ってお越しくださいました。

その本は、ガリ版で刷られた小冊子で、その方の奥様が、卒業旅行の思い出を残すために作られた旅行記でした。

経年劣化で痛んではいましたが、奥様がとても大事にされていて、今でも偶に、懐かしんで読んでおられるそうです。

近々、ご夫婦の記念日があるので、本を綺麗にして、サプライズでプレゼントしたいのと、奥様の楽しかった思い出を、子や孫に残したいので、何冊か残っていた中から、1冊だけ、黙って拝借してこられたそうです。

紙に変色や汚れはありましたが、幸い、インクの濃度は充分にありましたし、劣化している部分はレタッチや版下で修復できそうでしたので、ご依頼をお受けしました。

ウチに来られるまでに、何軒かに断られていたそうで、とても喜んでくださいました。

作業としましては、お借りした本をスキャナーで撮影し、画像データにしてから、レタッチアプリでゴミやホコリなどをマウスで消していくんですが、この作業工程は、印刷がアナログだった頃のやり方と一緒なんです。

昔は修正ペンのようなもので、フィルムに撮影されてしまったゴミやホコリの跡を塗りつぶしてました。

このゴミ取りは、昔も今も、かなり時間が掛かるので、作業に集中すると、気付かぬうちに無の境地に入れますから、好きな作業の一つです。

ちなみに、完全に文字が潰れていたり、修復できない場合は、同じ文字をコピーしてきて、差し替えます。

これも、フィルム製版時代に、写植の文字訂正でやっていた作業なんで、昔に戻ったようで、楽しい作業です。

複製ですから、全て元と同じにするべきで、製本も、同じ無線綴じにしようかと思ったんですが、ページ数が少ないと、将来的に背が割れることがありますし、割れないように綴じると、ページが開きにくくて読み辛くなりますので、中綴じにさせていただきました。

最終校正が終わった時に、お客様が、奥付にウチの屋号を入れてほしいと言ってくださいまして、とても嬉しかったです。

後日談ですが、お客様からお電話をいただきまして、サプライズは、見事に成功されたそうです。
奥様に手渡すと、「いやゃわぁ~、何、勝手なことしてんのんよ~!、恥ずかしいやんかぁ~!」と言いながら、とても喜んではったそうで、ご満足いただけて嬉しかったです。